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2015年センター試験数学2B「確率・統計」はどのような問題であったか

はじめに

センター試験数学2Bの選択問題は「数列」「ベクトル」「確率・統計」から2題を選択するが,ほとんどの受験生は「数列」「ベクトル」を選ぶ。それで満点近くを取れるならよいが,「20点満点のうちの15点取るのが厳しい」という方があればそちらは「確率・統計」に替えるべきだと私は思う。ずっと簡単だからだ。

今回は2015年の「確率・統計」が非常に簡単だったことを確認してもらおう。

2015年センター試験新課程数学2B第5問「確率・統計」の問題と解説

以下の問題を解答するにあたっては,必要に応じて29ページの正規分布表を用い
てもよい。

「29ページの正規分布表」は後で見せます。(1)には使いません。

(1) 袋の中に白球が4個,赤球が3個入っている。この袋の中から同時に3個の球
を取り出すとき,白球の個数を\(W\)とする。確率変数\(W\)について
\[
P(W=0)=\frac{[ア]}{[イウ]}\ ,\quad
P(W=1)=\frac{[エオ]}{[イウ]}
\]
\[
P(W=2)=\frac{[カキ]}{[イウ]}\ ,\quad
P(W=3)=\frac{[ク]}{[イウ]}
\]
であり

ごく普通の確率の問題だ。確率を求めるから7個の球はすべて区別する。ここから同時に3個を取り出す方法は全部で
\[
{}_7 C_{3}=\frac{7\cdot 6\cdot 5}{3\cdot 2\cdot 1}=35通り。
\]
よって
\begin{align*}
P(W=0) &= \frac{\overbrace{{}_3 C_3}^{赤3個}}{35}=\frac{[1]}{[35]}\\
P(W=1) &= \frac{\overbrace{{}_4 C_1\cdot {}_3 C_2}^{白1個,赤
2個}}{35}=\frac{[12]}{35}\\
P(W=2) &= \frac{\overbrace{{}_4 C_2\cdot {}_3 C_1}^{白2個,赤
1個}}{35}=\frac{[18]}{35}\\
P(W=3) &= \frac{\overbrace{{}_4 C_3}^{白3個}}{35}=\frac{[4]}{35}
\end{align*}

期待値(平均)は\(\displaystyle\frac{[ケコ]}{[サ]}\),分散は\(\displaystyle\frac{[シス]}{[セソ]}\) である。

\(W\)の期待値は,その定義から
\begin{align*}
\sum_{k=0}^3 k P(W=k) &=0\cdot
\frac{1}{35}+1\cdot\frac{12}{35}+2\cdot\frac{18}{35}+3\cdot\frac{4}{35}\\
&=\frac{[12]}{[7]}
\end{align*}
もっと簡単に計算するには,白球4個を白1〜白4と区別すると「白1が取り出される確率は
\(\displaystyle \frac3 7\)」であり,白2〜白4についても同様なので,
白球が取り出される個数\(W\)の期待値は
\begin{align*}
&\underbrace{4}_{白が4個}\times \underbrace{\frac3 7}_{それぞれが取り出
される確率}= \frac{[12]}{[7]}
\end{align*}

\(W\)の分散は,
\[
(公式) \quad (Xの分散)=(X^2 の期待値)-(Xの期待値)^2
\]
を用いればよく
\begin{align*}
&\sum_{k=0}^3 k^2 P(W=k)- \left(\frac{12}7\right)^2 \\
&=0^2 \cdot
\frac{1}{35}+1^2 \cdot\frac{12}{35}+2^2 \cdot\frac{18}{35}+3^2
\cdot\frac{4}{35} – \left(\frac{12}7\right)^2 \\
&=\frac{[24]}{[49]}
\end{align*}
ここまで数学1の「データの分析」の知識でOK。それで14点もある。数列よりずっと楽だよね。

(2) 確率変数\(Z\)が標準正規分布に従うとき
\[
P(-[タ]\leq Z \leq [タ])=0.99
\]
が成り立つ。[タ]に当てはまる最も適切なものを,次の<0>〜<3>のうちから一つ
選べ。
\[
<0>\ 1.64 \quad <1>\ 1.96 \quad <2>\ 2.33 \quad <3> 2.58
\]

確率変数\(Z\)が「標準正規分布」に従うとき,\(0\leq Z \leq Z_0\)を満たす確率\(P(0\leq Z \leq Z_0)\)は「正規分布表」(次図)の灰色の部分の面積で表される。その面積=確率の値が表になっている。\(Z_0\)の整数部分と小数第1位までが一番左の列に,小数第2位と第3位が一番上の行に書かれている。
150425normal_dist0

正規分布表のグラフは左右対称なので
\[
P(-[タ]\leq Z \leq [タ])= 2P(0\leq Z \leq [タ])
\]
となるから
\begin{align*}
2P(0\leq Z \leq [タ])&=0.99\\
すなわち\ P(0\leq Z \leq [タ])&=0.495
\end{align*}
となる[タ]を正規分布表から読み取ればよい。正規分布表で0.495に近い値を探すと,次図の赤線で囲った部分の0.4949と0.4951である。

150425normal_dist1

そこから一番左の列を見ると2.5,一番上の行を見ると0.07または0.08となっているから,[タ]は2.57または2.58である。よって最も適切な選択肢は<3>である。これで2点。正規分布表の見方を知っていれば,これは必ず解けるレベルだよ。

(3) 母標準偏差σの母集団から,大きさ\(n\)の無作為標本を抽出する。ただし,\(n\)は十分大きいとする。この標本から得られる母平均\(m\)の信頼度(信頼係数)95%の信頼区間を\(A\leq m \leq B\)とし,この信頼区間の幅\(L_1\)を\(L_1=B-A\)で定める。
この標本から得られる信頼度99%の信頼区間を\(C\leq m \leq D\)とし,この信頼区間の幅を\(L_2= D-C\)で定めると
\[
\frac{L_2}{L_1}=[チ].[ツ]
\]
が成り立つ。

「母集団」とは,データを調べたいもの全体だ。例えば大量に収穫した大根(重さなどを調べたい)などというものだ。これらの大根が一本当たりの重さの平均を調べたいとき,大根すべての重さを測るのは不可能(たくさんありすぎる!)だから,何本か無作為に選んで調べる。これが「無作為標本」だ。\(n\)個を無作為に選べば「大きさ\(n\)の無作為標本」という。

母集団の平均\(m\)がどれぐらいの値なのか,「大きさ\(n\)の無作為標本」から調べよう。\(n\)が十分大きいとき(←問題文にも書いてあった),「大きさ\(n\)の無作為標本」の平均を\(X\)とすると
\[
確率変数\ Z=\frac{X-m}{\frac{\sigma}{\sqrt n}}
\]
が標準正規分布に従うことが知られている・・・と数学B「確率・統計」で学ぶ。(式が複雑に見えるけど,教科書を読めば意味が分かるよ。)
\[
P\left(-Z_0 \leq Z \leq Z_0\right)=0.95 \ (=95\%)
\]
となるような\(Z_0\)を正規分布表から見つければ(見つけ方は数行下で)
\begin{align*}
&-Z_0 \leq Z=\frac{X-m}{\frac{\sigma}{\sqrt n}} \leq Z_0\\
\iff & \underbrace{X- Z_0 \cdot \frac{\sigma}{\sqrt n}}_{Aとする}\leq m
\leq \underbrace{X + Z_0 \cdot \frac{\sigma}{\sqrt n}}_{Bとする}
\end{align*}
となる確率が95%だとわかる。こうして定まる区間\(A\leq m \leq B\)が「母平均\(m\)の信頼度95%の信頼区間」である。(母平均\(m\)は確率95%でこの区間にある,と言うこと。)

\begin{align*}
&P(-Z_0 \leq Z \leq Z_0)=0.95 \\
\iff & 2P(0 \leq Z \leq Z_0)= 0.95\\
\iff & P(0\leq Z \leq Z_0)=0.475
\end{align*}
となるから,正規分布表から確率0.475を探すと,次図の赤線で囲った部分になる。
150425normal_dist2

その一番左の列の1.9,一番上の行の0.06を見ると,
\[
Z_0=1.96
\]
とわかる。よって
\begin{align*}
L_1&= B-A\\
&=X + Z_0 \cdot \frac{\sigma}{\sqrt n} -\left(X – Z_0 \cdot
\frac{\sigma}{\sqrt n}\right)\\
&= 2Z_0\cdot \frac{\sigma}{\sqrt n}\\
&=2\times 1.96 \cdot \frac{\sigma}{\sqrt n} \qquad \cdots 〔1〕
\end{align*}

同様に,母平均\(m\)の信頼度99%の信頼区間\(C \leq m \leq D\)は
\begin{align*}
&P(-Z_0 \leq Z \leq Z_0)=0.99\ (=99\% ) \iff P(0\leq Z \leq Z_0)=\frac{0.99}2= 0.495\\
かつ &-Z_0 \leq Z=\frac{X-m}{\frac{\sigma}{\sqrt n}} \leq Z_0
\iff \underbrace{X- Z_0 \cdot \frac{\sigma}{\sqrt n}}_{これがC}\leq m
\leq \underbrace{X + Z_0 \cdot \frac{\sigma}{\sqrt n}}_{これがD}
\end{align*}
として定まる。
\[
P(0\leq Z \leq Z_0)=\frac{0.99}2= 0.495
\]
となる\(Z_0\)は[タ]で求めた\(Z_0=2.58\)であるから
\[
L_2= D-C= 2Z_0 \cdot \frac{\sigma}{\sqrt n}= 2\times 2.58 \cdot
\frac{\sigma}{\sqrt n}
\]
以上より
\[
\frac{L_2}{L_1}=\frac{2\times 2.58 \cdot
\frac{\sigma}{\sqrt n}}{2\times 1.96 \cdot
\frac{\sigma}{\sqrt n}}=\frac{2.58}{1.96}=[1].[3]
\]
これで2点。

また,同じ母集団から,大きさ\(4n\)の無作為標本を抽出して得られる母平均\(m\)の信頼度95%の信頼区間を\(E\leq m \leq F\)とし,この信頼区間の幅\(L_3\)を\(L_3= F-E\)で定める。このとき
\[
\frac{L_3}{L_1}=[テ].[ト]
\]
である。

「大きさ\(n\)の無作為標本」での信頼度95%の信頼区間の幅\(L_1\)は〔1〕で求めた。
よって,「大きさ\(4n\)の無作為標本」での信頼度95%の信頼区間の幅\(L_3\)は〔1〕の\(n\)を\(4n\)に替えればよく
\[
L_3=2\times 1.96 \cdot \frac{\sigma}{\sqrt{4n}}
\]
よって
\[
\frac{L_3}{L_1}=\frac{2\times 1.96 \cdot \frac{\sigma}{\sqrt{4n}}}{2\times 1.96 \cdot \frac{\sigma}{\sqrt{n}}}=\frac12=[0].[5]
\]
これで2点。

数列やベクトルより楽でしょ。
「データの分析」の知識のみで,数学Bの「確率・統計」は勉強しないという無茶な態度(勧めない!)でも14点取れてしまうのだよ。

【旧受験数学BLOG 2015/4/25より】

2016/07/19追記。参考書をだします

まもなく,この分野を詳しく解説したワタクシの著書「教科書だけでは足りない〜確率分布と統計的推測」(河合出版)が発売されます。
「確率・統計」と言う単元は数列やベクトルと比べると内容がスカスカで,上で行ったように「正規分布表を読む」と言うのが目標と決まっています。例えば「今度のセンター試験の数列のテーマは何だと思いますか」と聞かれても誰も答えられませんが,「確率・統計」の場合は「初めに簡単な確率があって,最後は正規分布表を読んでお終いだな」と答えられます。(^^)v
だって,単元の性質上これ以外あり得ないもん。理由は次の通り。

  1. 初めに簡単な確率を聞くのは,平均や分散の基本公式を聞くため。ここで難しい確率にしてしまうと平均や分散にたどり着かなくなってしまうから、確率は難しく出来ない。
  2. その後,正規分布表を読ませるのは絶対外せない。これがないと統計と呼べないから。

ワタクシの本でゆっくり勉強しても毎日30分から1時間程度で二週間かかりません。やる範囲を最小限に絞れば6時間で終わります(どこに絞ればよいかは前書きに明記した)。それでも満点が狙えます。

センター試験の一週間前に「ベクトル(あるいは数列)が全然ダメだから半日だけ確率・統計をやってみよう」と言う人でも大丈夫なように,重要な事はその都度すべて書くようにして全部読まなくても勉強できるようになっています。

正規分布表の読み方を解説している参考書は現時点では本書しかありません。( ̄^ ̄)v
(『確率・統計』と言いながら統計的推測のことがサラッとしか書いてない本はあるけどね。あんなので独学は無理。肝心の統計的推測が身につかない。ひどいなぁ)
発売されたら是非お買い求め下さい。
ss 2016-07-19 11.12.46
(amazonでコスモスさんがレビューを付けてくれると良いな。)

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